チャンピオンのチャレンジ***
『僕のライダーとしての仕事はイタリアのマシンを勝てるものにすることだ』
1991年 これまで4度世界を制したチャンプである彼が、まだまだ発展途上にあるイタリア製マシンに乗る。
彼とチームスタッフは、日夜マシンの開発努力を怠らなかった。
そして1992年 第9戦ハンガリーGPで優勝!
日本製マシン以外の優勝は実に1976年以来の快挙である。
10年以上にわたってイタリアのメーカーが並外れた情熱を投じ懸命に叶えようとしてきた夢が現実になった。
レースの翌日、イタリアのメディアはイタリアンレッドに塗りつぶされた。
テレビは、彼の疾走を繰り返し映し出し、新聞はトップニュースとして一面を割いた。
彼に『あなたは、どんなバイクに乗っても速いが何故なのか』と聞いた記者がいた。
『僕が、バイクに乗るのが好きだからだろう。乗ることを楽しめれば、どんな種類のバイクでも構わないんだ。』
先ほどまで、雨の中で神業のようなライディングを見せていた彼を、急に身近な存在に感じた瞬間だった。