トンボの季節とともに***

蜻蛉■■ お~ちゃんの作品『蜻蛉』 ■■

お~ちゃんは今、長年お世話になっている書道の先生のお手本にしたがって、着々と作品を制作している。
私達ファンとしては、一日も早い一人立ちを期待するところである。

《ご注意》
無断転載を禁じます。
また、作品に関するご質問は、ちゅりが全てお受けいたします。
 
 
**************************************

この秋、3年間近く通った職場を離れる事になった。たくさんの興味深い人達との出会い、そして別れ。
私にとってこの職場は、いままで勤めてきたどの職場にもまして思い出深い場所となった。

3年ほど前私は、自分の国家資格を投げ打ち、縁あってその職場にやってきた。
スペシャリストとしておびただしい数の人間が働いているのにも関わらず、とても静かな印象のビル。
恵まれた環境の中で、それぞれが世界のビジネスの一端を担っているという自負ではちきれそうな、ちょっと冷たい印象・・・。
イヤ、そんなものは、、、
全然なかった!!

『おもしろい人が、ぎょうさんいるわ~』というのが、その日の私の第一印象だった。
訳がわからないまま、『ご挨拶』と称する『引き回しの刑』にあいながら、私はいろいろな人に私を紹介してくれる、わが直属のボスの言葉を漫然と聞いていた。

『あ、そうそう、Tさんね、バイクに乗るのよ~。』  
え、えっ!あのダンディーで、でもちょっとおとぼけ気味の関西弁を話すT氏が・・・。
そこは怖いもの知らずのワタクシ、翌日すぐに職場のTOP 『T氏』 に話しかけていた。

『あの、バイクに乗られるんですかぁ』
『はぁ?』 
『バイクに、、、あの、乗られるって、あのぉ、そのぉ、、、』
『?』

きっと、T氏は面食らったことだろう。
先日入ったばかりの、それもどうみてもバイクとは縁のなさそうな私から、突然『バイクに乗ってるの?』なんて聞かれたのだから。

しかし、これがこの職場の面白いところ、一瞬ためらってから、楽しげに返事を返してくれたT氏の人のよさにつけこんだ私は、その後バイクのお仲間としてなにかにつけてメールを送りつける決心をしたのだった。
T氏が職場のTOPだったのにも関わらず、だ。

あ~、、、Tさん、いまさらですが、ごめんなさい!
 
 
 
 
その職場に移って少ししたころ、私は前の職場で一緒だったM嬢に電話をした。

『お仕事は大変なの。とーっても大変。でも、、、こっちにおいでよ~!!』
そうして彼女は来た。なんにも知らないで・・・。

私も彼女も、器用な性質ではない。
私は、パーッと走っていって、全てを掌握したつもりになって、そのくせ大きい穴をあけても全然気がつかないタイプ。
彼女は、とにかく慎重に慎重を期す人で、いろんなことをじっくりじっくり自分のものにしていくが、その分時間をたっぷり必要とするタイプ。

このデコボココンビが、とっかえひっかえ、ミスし、落ち込み、なぐさめ合い、そして立ち直るという、果てしない繰り返しの道を歩んでいたことを、何人の仲間が気付いていただろう。

そうしながらも私は、彼女の声に、誰にも真似の出来ない響きがあることに気づいていた。
しかし、この天性の『声』が何物にもかえがたい才能だという大事なポイントに、彼女自身は気付いていたのだろうか。
私達の仕事は、電話で問い合わせてくるお客様に対応することがメインだった。
初めてかけた電話の先で、柔らかい明るい落ち着いた声が対応してくれたら、誰だってホッとするだろうし、その後のフォローを疑うことがないだろう。
彼女は、そんな声の持ち主だった。

私は毎日彼女の声を聞きながら、早口の自分をいましめ、電話に出る瞬間には口元に微笑が浮かぶように、楽しい事をいつも思い浮かべつつ仕事をするように心がけた。
 
 
 
 
しかし、仕事とは、いつもそんなに楽しい時ばかりではないのが現実だ。
つらい時期もあった。

気の合わない仲間もいたし、いわれのない中傷にさらされた時もあった。
そんなとき、『おれがついてる。頑張れよー!』というヤツがいた。Kだ。

かなり年下のクセに、妙に兄貴ぶっていて生意気なヤツ。
第一印象にあまり左右されない私だが、実は、初対面の彼の印象があまりに悪くて、なるべくそばによらないようにしていたものだ。
本当に傷つきつらい時には人には言えないものだが、ある時私は、なにを血迷ったのか、Kあいてに綿々とつらい思いを打ち明けていた。

打ち明けられた彼もビックリしたようだったが、本当は、当の私が一番驚いていた。
しかし、彼の口からはいつもの軽口は聞かれず、それどころか、『詳しく話せ。おれがぶっ飛ばしてきてやる!』と言う。これには私もまいった。

話しは帰りの電車の中まで続き、その頃には私よりも彼の方が熱くなっているしまつ。
私自身はといえば、それまで自分が悩んでいた事、思いこんでいた事があまりにも小さく、それほど悩むほどの事ではないということに思い至って、急に恥ずかしくなっていた。

どうもそれが彼の『手』だったようだ。
本当に本当に悔しいが、その『手』に乗っかってその時の憂鬱を切りぬけた私は、最後まで私を理解していてくれた、たくさんの人達をあらためて意識することができたのだった。
そういう意味では彼の『手』もまんざら、ただの『手』ではないのかもしれない。

そんな事を書くと、きっと彼はいつものデカイ声で、『いい事書くじゃん。そうなんだよ。
おれの手は実は神の手なのさっ』などとのたまうことだろう。
実際、かなり悔しい話しだ。
なので、ここで遅れ馳せながらかたきをうつ事にしよう。

へそまがりの彼が一番嫌がる評価、しかも、彼をあらわすぴったりの言葉を進呈するのだ。
『Kは……、本当に、じつにイイ青年です!』
 
 
 
 
ここまでの内容だと、私がまじめに仕事をしてこなかったように思われても仕方がない。
しかし、仕事は仕事、お給料を頂いているからには、へらへらしてばかりはいられない。

髪の毛を逆立てながら毎日の仕事をこなし、上へ上へと自分を押し上げていく。
世の中では、スキルアップと一言で言うけれど、会社勤めをしたことのない私には、ビジネスの常識やITの世界など一日で理解できるわけがない。
だから、移った当初は毎日がアップアップの状態だった。
しかし、時間というものはすごい力をもっているものだ。
コンピューターなど触った事もなかった私が、わずか数年であとから入ってきた仲間達にいろいろアドバイスできるまでになるのだから。

そう、私はちょっと調子に乗っていたのかもしれない。
その職場を離れること、次の職場への移動が決まった時にそれが露見してしまった。

『今度の職場って、ここでのスキルを考慮してもらえないんですよぉ。』と、ちょっと泣きが入った私に、O嬢は笑顔で言った。
『ふーん。そうするとまた新しくスタートってことだね。楽しみだねえ。』と…。
『やられたっ』と私は思った。なんということだろう。確かに彼女の言うとおりなのだった。

ここでのスキルはここだけのもの。
移った先では、また新しい知識や技術が必要なわけで、また一からのスタートなのだ。
私は、彼女にまたひとつ教えてもらったのだ。そして『かなわないなー』としみじみ思う。

仕事の時には、ときに厳しい顔も見せる時もあった彼女、しかし、仕事の忙しさ自体を楽しんでしまうそのおおらかさは、きっと誰にでもあるという資質ではないだろう。
現に、忙しすぎてすっかり以前と変わってしまった人だっている。
私も、この半年の忙し過ぎる状態で、危うく自分を見失ってしまうところだったのだから。
 
 
心を亡くすほど、自分を忙しくしてはいけない。いつもいい方向に自分を向けて、毎日を後悔なく過ごすこと。
いい毎日の積み重ねが結局はあんたの一生なんだから、と言ったのは母だったろうか。
 
 
さーてと。
また明日から、今度の職場に通うために買ってもらった自転車の練習をしなくっちゃ!!
頑張るぞ~!!
でも、ちょっとだけね…。
 
 
 
 
出来の悪い私を、ずっと支えてくれたたくさんの方々に ありがとう!!
そしてサヨナラ!!
 
 

My Story Indexへ